@各国 仲良く

おぼえがき兼ポエム集。タイ料理。

梅雨が早く明けてほしいです。

さて、最近はかなり曖昧な理解にとどまっているシローの定理*1くらいから復習して代数に本腰を入れるべきだと感じているものの、いろんな数物に目移りしたり、日々荒みがちな精神の休養のために、エモーショナルな音楽を聴くなどして時間をかけているから、思っている通りに歩を進められていません。

 

ところで、代数と解析と幾何学とか数学基礎論*2というカテゴライズ自体に意味は特にないと思うものの、 上でもそうであるように自分もかなりの頻度で使うことが多いです。 やはりそう言うのが一定の便利さを持っているからだと思います。

 

*1 とてもつよい定理であるということは群の構造の決定に関する問いを講義で習ったことを通してわかったのでよく理解しなきゃなと思います。  今の1日24時間の感覚を残したままで1日50時間くらいにならないかな。 その時間で、意義深いところに到達して今まで感じたことのないような深みを知るということを体験したいです。

*2 数理論理学ともいいます。 数学を論理学の上に基礎付けることを発端とする領域です。まったく知らなすぎていうのも憚れるものの、今日では基礎づけという方向とは少し違うような方向で、ある命題が成り立つときに使われている公理はどういったものなのか、ある公理体系が表現可能な範囲は何なのかについてを考察の対象としたり、定理から公理を導く逆数学なども展開されているようです。

最近になってヒルベルトの零点定理という代数学の問題が、この数学基礎論を主に構成する集合論・計算理論・モデル理論・証明論の中のモデル理論の枠組みで別証明が与えられていることを知りました。 よくわからないので驚けません。

 

以下、

[1]「数学語圏-数学の言葉から創作の階梯へ- 」   志賀弘典 著

を参考にこの記事を書きました。

 

評価という好きじゃない言葉があります。 今日も授業で、創薬の段階には合成や計算機による探索(もちろん様々な人たちが様々な科学分野を日々積み重ねていると思いますが、 計算機の支援を利用した研究開発が最先端に位置付けられていることをその場で了解しました。 お話しされたのはその分野の研究者さんでした。 ) と出来上がった新薬の評価があるということを知りました。

ここでいった評価とは「一定範囲の対象に広く適用しうる自動的基準にしたがって物事の価値を数値化する」こと ( [1] P.66 ) に当たります。すなわち、一般での評価という語の用法と創薬における評価という語の運用方法はほぼ一致しています。

ほぼ、と書いたのは新薬の評価においては毒性や物性、薬理動態など多面的な価値の数値化 ( 数値以外の指標もあるかもしれない ) が要求されているという事実があるからです。

 

数学においても評価という語は頻繁に用いられています。 それは何かと何かの間の( 準同型とか単射性とか比例関係とかをさすような ) 関係性を述べたときにも、広い意味で評価したと言えると思いますが、数学では「評価」という語は「上限または下限の有用な見積もり」( [1] P.67 )という意味で使うらしいですその本では。不等式はそれ自体が評価していることを表しています。個人的には極限が定まるということも存在しないということやある三点が同一直線上に並ぶことを示すということも評価の範疇に入ると思います。

 

さて、コンピュータ数理学という人によっては虚無を感じ、人によっては楽しみを覚える授業があります。いつかは忘れたけどs>1においては \displaystyle \zeta(s) = \sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{n^s} は収束することをmathematicaを使って示すことをしました。

周知のように s\leq 1 では発散することは初等的に示されます。このことによって\displaystyle \zeta(s) = \sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{n^s}Re(s) > 1を満たす複素数sに対して収束しその範囲で正則関数となりますが、複素平面全体に有理型関数として拡張定義(解析接続といいます)され、s=1を除いて正則となります。これがリーマンが発見したゼータ関数です。リーマンはこの関数の零点は自明なもの以外は全てRe(s)=1/2上にあることを予想し、さらにその零点の分布密度についても予想しました。これがリーマン予想と言われているものです。

ところで自然対数eや円周率\pi無理数であること、そして超越数*3であることの証明はそれらが単純な数であるのに反して評価するのが難しい評価の例として面白いです。 (西岡久美子 :「超越数とはなにか」を積読していますが、余裕が出てきたら読みたいです。 ) というか、一般的にある数が超越数であることを示すのは困難が伴うとのことで、e+\pi e\pi 超越数かどうかは証明されていないらしく、評価するというそれだけでも奥深い世界が広がっていると思うと高校生のときの数学に興味を持ち始めた感覚がまた蘇ってきていい気持ちにさせてくれます。今は急かされるように証明を見ていたり眺めていたりすることが多いので、それはそれでその効率さから、偶々やった命題が他の別分野の本での定理の証明で使われていたりとかで良い気分になることが多いですが。

*3 a_0を0でない整数、nを1以上の整数とします。複素数\alphaが整数係数の多項式 \displaystyle
f(x)=a_0x^{n}+a_1x^{n-1}+ \cdots +a_{n-1}x+a_n
の零点となるとき\alphaは代数的数といい、代数的数でない数を超越数といいます。超越数は一見実用的でもなければ本質的でもないように思えますが、円分体論や作図問題と関わりがあります。例えば、 ギリシャの三大作図問題の一つである円積問題 「与えられた円と同じ面積をもつ正方形を定規とコンパスのみで作図せよ」は19世紀まで多くの人たちを悩ませ続けてきました。定規とコンパスで作図できる数は、 四則演算と平方根を有限回用いて得られる数であり、代数的数であることに対応しているので、\piの超越性の証明により\sqrt{\pi}超越数になることから、円積問題に決着がついて不可能であることが証明されました。 (もし半径1の円の面積\piと同じ面積をもつ正方形が作図されたならその正方形の一辺は\sqrt{\pi}でこれは作図できた数なので代数的数となり、別の議論の枠組みで\pi超越数であることと、\pi超越数ならば\sqrt{\pi}超越数であることが示されているので矛盾します)

超越数かどうかは実用上はあまり意味を見出せないということを既に述べました。確かにa\neq 0e^aは同時に代数的数になることはないことや、\frac{a}{2\pi i}有理数となる場合に限って例外的にe^aは代数的数となる(塩川宇賢 :「無理数超越数」)ことがわかっても実用性はないです。それでも数がもつ性質が一つでも多くわかったらそれはいいことだと思うので、これからその超入門事項をそこはかとなくかきたいと思います。

e超越数であることは初等的な方法でも示されます。 xm多項式P(x)に対して I(x):=\int_0^{x}e^{x-t}P(t)dt=e^{x}\int_0^{x}e^{-t}P(t)dtとすると I(x)= (e^{x}P(0)-P(x))+\int_0^{x}e^{x-t}P'(t)dtと部分積分されてさらに I(x)=(e^{x}P(0)-P(x))+(e^{x}P'(0)-P'(x))+\int_0^{x}e^{x-t}P''(t)dtです。 次数が下がりきるまで下げると I(x)=e^{x}\sum_{k=0}^{m}P^{(k)}(0)-\sum_{k=0}^{m}P^{(k)}(x)

ここで互いに素な整数 a_0 (>0),a_1に対してa_0e+a_1=0をみたすと仮定して矛盾を導けば、e超越数であることがいえます。また、p素数としてP(x):=x^{p-1}(x-1)^{p}とおきA:=a_0I(1)とおきます。 このAを2つの側面からみると簡単に矛盾することがわかります。 A=a_0I(1)=-a_1\sum_{k=0}^{m}P^{(k)}(0)-a_0\sum_{k=0}^{m}P^{(k)}(1)となります。 ここでP'(x)=(p-1)x^{p-2}(x-1)^{p}+px^{p-1}(x-1)^{p-1}P(1)=0,P'(1)=0,\cdots , P^{(p-1)}(1)=0, P^{(p)}(1)=p!, P^{(p+1)}(1)=p!(p-1),\cdots がえられ、P^{(k)}(1)p!の倍数です。 また、 P(0)=0,P'(0)=0,\cdots P^{(p-2)}(0)=0,P^{(p-1)}(0)=(p-1)!(x-1)^{p}_{x=0}=-(p-1)! P^{(p)}(0)=-p(p-1)!, \cdots より、a_0I(1)を展開した各項はただ一つの-a_1P^{p-1}(0)以外はp!の倍数です。よって|A|(p-1)!で割り切れる整数であり、|A|\geq (p-1)!です。

また、0 \leq  x  \leq 1において |P(x)|=|x^{p-1}(x-1)^{p}| \lt 1 だから

|A|=|a_0I(1)| \leq a_0\int_0^{1}e^{1-t}|P(t)|dt \leq a_0\int_0^{1}e^{1-t}dt \lt a_0\int_0^{1}e dt=a_0e

a_0epによらない整数ですが、|A|\geq (p-1)!によるとpによって|A|はいくらでも大きくなるので矛盾します。よって、a_0e+a_1 \neq 0となり、e超越数です。

\pi超越数であることの証明についてがかかれている2019年7月4日現在、京都大学数理解析研究所助教である大浦拓哉氏のPDFのリンクを貼らさせて頂きたいと思います。

http://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/~ooura/pi_trn.pdf

最後になります。シローの定理などのように本質的でも実用的でもないと思われますが、掲げたいと思います。

問 \begin{align} \frac{100}{120}<\sin 1< \frac{101}{120} \end{align} を示せ.

2以上の任意の自然数nに対して \begin{align} n-\sum_{k=2}^n\frac{k}{\sqrt{k^2-1}}\geq \frac{i}{10} \end{align} が成立するような最大の整数iを求めよ.

命題

p,q自然数とする. \alphaが代数的数のとき\beta=\alpha^{p/q}も代数的数である. \alpha超越数のとき\beta=\alpha^{p/q}超越数である. よって\sqrt{\pi}超越数である.